ヘパシウイルス属(Hepacivirus)は、フラビウイルス科の一本鎖プラス鎖RNAウイルスの属である。ヘパシウイルスCに属するC型肝炎ウイルス(HCV)は、肝炎及び肝細胞癌に関連するウイルスで、知られている範囲では、ヒトを唯一の自然宿主としている。
分類学
この属に属すウイルスは、ヘパシウイルスA~Pの、15種に分類されている。
- ヘパシウイルスA - イヌヘパシウイルス、非霊長類ヘパシウイルス、馬ヘパシウイルスを含む。
- ヘパシウイルスB - GBV-Bウイルスを含む。
- ヘパシウイルスC - 以前の種、C型肝炎ウイルスに含まれるウイルス、C型肝炎ウイルスを含む。
- ヘパシウイルスD - Guereza hepacivirus を含む。
- ヘパシウイルスE - rodent hepacivirus-339 を含む。
- ヘパシウイルスF - rodent hepacivirus-NLR07-oct70 を含む。
- ヘパシウイルスG - Norway rat hepacivirus 1 を含む。
- ヘパシウイルスH - Norway rat hepacivirus 2 を含む。
- ヘパシウイルスI - rodent hepacivirus-SAR-3/RSA/2008 を含む。
- ヘパシウイルスJ - rodent hepacivirus-RMU10-3382/GER /2010 を含む。
- ヘパシウイルスK - bat hepacivirus-PDB-829 を含む。
- ヘパシウイルスL - bat hepacivirus-PDB-112 を含む。
- ヘパシウイルスM - bat hepacivirus-PDB-491.1 を含む。
- ヘパシウイルスN - ウシヘパシウイルスを含む。
- ヘパシウイルスP - オナガホッキョクジリスに感染する。
この他にも、シラガタケネズミ(Rhizomys pruinosus)から分離された新しいウイルスがあるが、先述した属のいずれにも属していない。
また、この分類群に含まれる別の未分類のウイルスは、アヒルヘパシウイルスに似たウイルスである。
また、この属には、ハクトウワシから分離されたウイルスもある。
構造
ヘパシウイルス属のウイルスは、球形の構造に包まれており、直径は約50nmである。遺伝子は線形で、分割されておらず、長さは10kb(キロベース)である。
ライフサイクル
宿主細胞への侵入は、ウイルスエンベロープタンパク質Eを、クラスリン依存性エンドサイトーシスを取り成す宿主の受容体に付着させることにより、達成される。侵入後は、プラス鎖RNAウイルスの複製・転写の方式で増殖する。また、翻訳は、ウイルス自身が開始する。人間は、自然宿主として機能し、性的接触や血液を介して感染する。
歴史
人においてC型肝炎の病原体であり、ヘパシウイルスCに分類されるC型肝炎ウイルス(HCV)は、1989年に発見された。現在までに、C型肝炎ウイルスの1~7までの7つの遺伝子型と、1a、1bなどの86のサブタイプ(亜型)が命名されている。
1995年に発見されたGBV-Bウイルス(GBウイルスBとしても知られる)は、広鼻猿、特にタマリンに感染することができるウイルスで、HCVと同様に、血液媒介経路によって伝播され、ウイルス性肝炎に関連している。しかし、GBV-Bは野生動物で確認されたことはなく、その自然宿主は不明である。
追加情報
その他のヘパシウイルスは、コウモリ、ハタネズミを含むげっ歯類、ウマおよびイヌから報告されている。
牛は、ヘパシウイルスN種に属するウイルスの宿主でもあるようである 。
げっ歯類ヘパシウイルスは、シカマウス(Peromyscus maniculatus)に見られる。
優雅なネコザメ(Proscyllium habereri)からも、ヘパシウイルスに関連するウイルスが分離された。
ウマヘパシウイルスには少なくとも2つのサブタイプがある。
ヘパシウイルスCに最も密接に関連するウイルスは、ヘパシウイルスA種に属するウマヘパシウイルスである。
ヘパシウイルスAはロバにも感染することが分かっている。
参照資料
外部リンク
- ICTVレポート :フラビウイルス科
- ビラルゾン : ヘパシウイルス
- ウイルス病原体データベースおよび分析リソース(ViPR):フラビウイルス科

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